体験談 / 一病息災 Vol.129(2024年7月号)

腎臓病と共にイキイキと暮らす方々に、腎臓サポート協会理事長 雁瀬美佐がインタビュー
(職業や治療法は、取材当時のものです *敬称略)
  • PD

宇佐見 美代子 さん(うさみ みよこ)

患者さんの体験談~一病息災~ vol.129

家族と訪問看護のサポートで安心
腹膜透析で過ごすゆったりとした日々

かかりつけ病院の指導をしっかり守りながら、娘さんと訪問看護師さんとの連携したサポートを受けて、腹膜透析(PD)の生活を送る宇佐見さん。なにごとにも欲張らない、自然な透析との向き合い方を教えてもらいました。
聞き手:雁瀬 美佐(腎臓サポート協会)

年齢(西暦)
40代 糖尿病と高血圧を患い、かかりつけ医で治療開始
74歳(2016年) 極度に痩せ、検査で腎臓病と診断される。総合病院で治療開始
75歳(2017年) 腹膜透析(CAPD)開始
80歳(2022年) 自動でつなぐ腹膜透析(紫外線照射器)に変更
82歳(2024年) 現在、腹膜透析を1日4回

生活を変えないために腹膜透析(PD)を選択

雁瀬 いつ頃から腎臓が悪くなられたのでしょうか。
宇佐見 74歳の時です。もともと40代から糖尿病と高血圧を患っていて、クリニックに通って薬を飲んでいました。70歳を超える頃からどんどん痩せていったので検査をしたら、腎臓病と診断され、大きな病院を紹介されました。専門医にかかって、保存期を過ごしていましたが、それでも体調はどんどん悪くなっていき、先生から「そろそろ透析も考えて」と言われたんです。
雁瀬 透析と言われた時のお気持ちはどうでしたか。
宇佐見 考えましたね……。透析については何もわからなかったので、先生にも子どもたちにもたくさん相談しました。最初の病院では血液透析(HD)の説明だけだったので、看護師をしている次女と相談して、少し大きい他の病院にも行きました。そこでは、HDとPDの2つの透析について説明がありました。その頃は私もまだ働いていたので、毎日病院に通うHDは大変だし、PDなら家でやれるし、仕事も家事も続けられるんじゃないかと思ってPDを選びました。腎臓が悪いことがわかってから1年くらい経っていましたね。
雁瀬 実際に自分でやってみてどうでしたか。
宇佐見 最初の頃は、1日3回手動でやっていましたが、私は感染しやすかったんです。腹膜炎になって入退院を繰り返すので、先生からHDに切り替えたらどうかというお話をされたこともありましたが、できるだけ生活を変えたくなかったのでPDの継続を希望しました。
雁瀬 今は自動でバッグを接続する機器(紫外線照射器)でCAPD(持続携行式腹膜透析)をしていらっしゃいますね。
宇佐見 すごく便利で快適になりましたよ。機械でつなぐようにしてから2年経ちましたが、一度も腹膜炎にはなっていません。かかりつけの病院にも1カ月に1回の受診だけ。もっと早くにやっておけばよかったと思います。今は1日4回、4時間おきにやっているのですが、時間になるとアナウンスしてくれますし、次に何をやるかも音声で教えてくれるので、その通りに自分でやればよくて簡単だし順調です。ただ、1回だけ、やっている最中に機械が止まったことがありました。でもこの機械に書いてあるコールセンターに電話したら、すぐ直しかたを教えてもらえました。

宇佐見さん

好きなことを続けたいから食事療法もしっかり

雁瀬 40代から糖尿病と高血圧とのことで、食事についても色々指導があったと思いますが、その点はどうしていましたか。
宇佐見 糖尿病と高血圧になってから食事は少し気にしていましたが、本格的に食事療法を始めたのは腎臓が悪くなってからです。元々お肉とかカロリーの高いものが好きですが、調理したお魚や野菜をよく食べるようにしました。調味料はできるだけ使わないようにして、お醤油とかお味噌も全部減塩に変えました。お水も1日1Lは飲むようにしたり、果物は控えたり、自分でしっかり考えながらやっています。たまに検査の数値が上がったりすると、栄養士の方に何を食べたか聞かれることはありますが、それ以外は基本的には数値も安定していますし、食事の管理はうまくできていると思います。
雁瀬 普段はどのように過ごしていますか。
宇佐見 透析が4時間おきなんで、遠出はできませんが、家事はしっかりやっていますよ。今は、足が悪くなってあまり行けてないんですが、もっと歩けていた頃は透析のタイミングを計算しては、推しのコンサートによく行っていました。透析してから出かけて、コンサートを観て、帰ってきてすぐに透析、という感じで。今は、家でビデオを観るくらいですが、散々生で観てきましたからそれで十分です(笑)。

宇佐見さん

大切な周りからのサポート

雁瀬 娘さんがよくいらしているそうですね。
宇佐見 水曜日に長女が、土曜日に看護師の次女が毎週来てくれて、月に1回の検診は次女に車で連れていってもらいます。娘たちとはたえず連絡を取り合っていますね。朝起きて気分がいいと、今日は何をやろうかなと考えたりして気持ちが前向きになります。毎月の採血結果で、うまくいっているのがわかると嬉しいですね。検診日には次女と外食したり、車を止めて景色を眺めたり、色々と寄り道をして楽しんでいます。ついこの間も母の日のプレゼントだって、病院の帰りに鰻を食べて、美容院にも連れて行ってもらったんです。遠出はできないけど、それで十分です。
雁瀬 訪問看護師さんのサポートも心強いですね。
宇佐見 週1回来てもらっていて、まず食事や透析の様子など1週間の出来事を伝えます。血圧を測って、聴診器を当てて、腹膜透析のチューブ出口部確認など、色々やってくださって、その内容を交換日記みたいにして、かかりつけの病院と共有してくれています。もちろん子どもたちにも。本当にありがたいですよ。何かあればまず訪問看護師さんに電話します。自転車ですぐ来てくれて、必要だったら娘や病院にも連絡してくれます。
雁瀬 透析をしながらも穏やかな毎日を送られていますね。同じように腎臓病を持つ患者さんたちにお伝えしたいことはありますか。
宇佐見 認知症の夫のケアもあるので、できるだけ長くPDで今の生活を続けたいと思っています。HDになるとおそらく今の生活を続けるのは無理なんですよね。看護師さんもそんな私の気持ちに寄り添ってくれています。透析を抱えながらもそれなりに楽しく暮らしている私のような人間もいますので、一緒に頑張っていきましょう!

お孫さんの成人式の晴れ着姿を見て「生きててよかった」

お孫さんの成人式の晴れ着姿を見て
「生きててよかった」

卒業式の日、袴姿のお孫さんと

卒業式の日、袴姿のお孫さんと

カテーテル挿入術前に家族で行った温泉旅行でご主人と

カテーテル挿入術前に家族で行った温泉旅行でご主人と

片岡さん

訪問看護師 片岡今日子さん

機械でつなぐ腹膜透析器を使うことになった時に病院から訪問看護を要請されました。自宅で機械を使うので、その腹膜透析の見守りと全身状態のケアをおこないます。食事管理はかなりしっかりできていますが、自制も厳しめなので、むしろ「もう少し食べていいですよ」とアドバイスをしています。また、要介護の状態ではないので、介護保険は申請せず、医療保険でカバーされているので、ご本人の支払い負担はありません。病院と娘さんと私がチームになって、宇佐見さんの透析と普通の生活をできるだけ続くように支えていきたいですね。

1週間に1回の訪問看護スケジュール

14:00~ バイタルサイン測定、状態観察、体重確認、むくみや呼吸状態の確認(溢水による心不全などを未然に防ぐため)
14:10~ 腹膜内の透析液の排液開始
介入当初は、指導しながらおこなっていましたが今は自分でできるので、見守りのみ
14:25頃~ 排液終了後、排液の内容確認、量の確認、除水量の確認
14:30~ 注液開始(見守り)同時に、出口部ケア。発赤が無いかなどを確認し、必要時消毒など
14:45~ 次回の訪問時間確認、共有ノートに記入。病院の看護師さんに申し送り事項など記入
14:50~ 退出

共有ノート
共有ノート

インタビューを終えて

ご主人のお世話をしながらも、ご自身の透析を娘さんや訪問看護師さんに支えられて、無理なく穏やかに笑顔で過ごしていらっしゃる様子が印象的でした。
訪問看護師さんを娘さんのように信頼し、リラックスして会話されていました。公的な仕組みを上手に利用することは、自宅での透析を支える大きなよりどころになることを教えていただきました。

 

雁瀬美佐

一覧に戻る