透析にならないために
~腎臓病養生の5つのはかり~
慢性腎臓病(CKD)により腎機能の低下が進んで透析が必要になる患者さんの数は年々増加しています。しかし腎臓病の患者さんの多くは、「透析は避けたい」「なるべく先に延ばしたい」「一生絶対やりたくない」と望んでいらっしゃることと思います。そのための大切なヒント「5つのはかり」を紹介します。これは透析に入った後に、体調を良好に保つためにも大切なポイントですので、参考にしてください。
東京医科大学 腎臓内科 科長 中尾俊之先生
慢性腎臓病(CKD)には多くの病気がありますが、代表的なのは、糖尿病性腎症と慢性糸球体腎炎ならびに腎硬化症です。これらに次いで多発性嚢胞腎なども頻度が少なくない病気です。確かにこのような腎臓病は治りにくいのですが、しかしたとえこのような腎臓病を患っていて治らなくても、進行しなければ大丈夫です。透析になるのを防ぐためには、専門の医療機関できちんと相談を受けることのほか、ご自分での養生が大切なのです。透析になるのを防ぐために、まずは以下に述べる「5つのはかり」を実行しましょう。
臓病養生の5つのはかり
- 体重をはかる
- 血圧をはかる
- 食事量をはかる
- 尿量、尿成分をはかる(血液検査に合わせて)
- 血液成分をはかる
※尿成分や血液成分は病院の検査ではかります。
1.体重をはかる
健康的体重を維持することが大切
低たんぱく食事療法をおこなっている患者さんで、炭水化物や脂質からのエネルギー摂取量が少ないと次第に痩せてしまいます。またむくみが出ている時は、体内の水分量が増えて、いわゆる水太り(体液過剰)の状態となります。腎臓病が進んだ患者さんで腎機能が正常の30%以下の方は、毎日、朝、排尿後、朝食前に、下着のままではかりましょう。
2.血圧をはかる
病院ではかると、血圧が高くなる傾向が
高血圧があると腎臓病の進行が早くなりますが、血圧は一日のうちでも変動が多く、たまの病院受診時には普段より血圧が上昇する人が多いものです(白衣高血圧)。調査結果でも、約4分の1の患者さんは自宅ではかった血圧(家庭血圧)よりも、病院の受診時に血圧が上昇していることが分かっています。
普段の血圧をはかりましょう
高血圧の患者さんでは、降圧薬の量や種類を決めるうえで普段の血圧を知ることが重要です。ぜひ普段の血圧を自分ではかってください。最近では一人で簡単に操作できる良い自動血圧計がたくさん出ており、だいたい1万円前後です。腕(上腕)に巻いてはかるものが正確です。指ではかるものや手首ではかるものも出ていますが、あまり正確でないようです。
自分で血圧をはかるときは
朝起床時と夜就寝前の2回を基本とします。測定した結果は数字のまま用紙に記録しておいてください。(グラフにする必要はありません。手間がかかるうえ、後でわかりにくくなります)。
3.食事量をはかる
腎臓病では食事療法が大切
とくに低たんぱく食事療法をおこなっている患者さんや糖尿病性腎症の患者さんでは、普段の毎日の食事量をきちんとはからなければうまくいきません。
4.尿量、尿成分をはかる
一日の尿量を知る
畜尿検査では一日(24時間)の尿を貯めて、量をはかって検査に提出します。病院では尿中の色々な成分の濃度を測定し尿量を掛け合わせて一日にどのくらい腎臓から排泄されているか検査します。
血液検査を同時に受ければ
血中の同じ成分が尿に排泄される能率(クリアランス)を判定することができ、これにより腎臓機能の低下の程度を正確に診断できます。食事療法がうまくいっているかどうかも判定できます。
畜尿検査をしないと、腎臓病の管理は正しくできません。
畜尿検査は、腎不全の患者さんでは1ヶ月に一度位、もっと程度の軽い腎臓病の患者さんでは2~6ヶ月に一度位の割合で受けてください。
5.血液成分をはかる
病院で定期的に採血をうけて、血液検査をしてください。血液検査は尿検査と同様に、腎臓病の診断の基本となっています。
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