~制限から奨励に~ 転換しつつあるCKDの運動療法
2017年4月
2016年の4月に腎臓病の運動療法の一部に健康保険が使えるようになって1年がたちました。
このあいだに慢性腎臓病(CKD)と運動についての話題を目にするようになりましたが、その一部をご紹介しましょう。
研究が進む、CKDの運動療法
昨年、保険適用になった腎臓病の運動療法は、糖尿病で腎機能が落ちたCKDステージ4の患者さんに、医師が透析予防のための運動指導をした場合という限られたもので、この制度を知らない人もいるのではないでしょうか。以前は運動を控えたほうがよいと考えられていた CKDですが、現在では適度な運動が効果的であるといわれるようになりそれがキチンと評価されたのは画期的なことでした。
CKDに運動が制限されてきた理由としては、筋肉を使うことで発生するクレアチンなどの老廃物が腎臓に負担をかけることや、汗をかいて体内の水分が失われることで、水分量を調整している腎臓の仕事を増やしてしまうことなどがありました。しかし最近では、「CKD患者では、運動習慣がない群に比べて運動習慣がある群の全死亡率が有意に低く、かつ血液透析への移行が有意に遅くなることが示されている。」(出典:I-Ru Chen, et al. Clin J AmSocNephrol.2014;9:1183-9.)という研究結果も報告されています。また、安静にしすぎて体力が落ち、日常生活を送ることさえ大変になってしまう人が増え、体力低下を防ぐためにも適度な運動が必要だといわれるようになってきました。
運動を取り入れている病院も増加
日本腎臓学会で2015年にだされた『慢性腎臓病生活・食事指導マニュアル』では、「運動が腎機能や尿蛋白に与える影響は明らかではない。しかし運動を実施することは、CKDの進行に関与する、高血圧、耐糖能異常、脂質異常症、肥満などを改善する効果があることから、重要といえる。 また運動の実施はCKD患者における健康関連 QOLの改善効果を期待できる。」として、病気の進行状況や体調に合わせた運動を奨励しており、運動するときのセルフチェックリスト(表)なども公表しています。
このようにCKDの運動療法についての取り組みが進められています。運動療法を治療に取り入れている病院も増えてきていますが、ひとくちに運動といっても、保存期の患者さんでも病期や体力によって変わり、透析をしている方はまた違った運動指導がありますので、運動を始めようと思う方は、主治医に相談し、自分にあった運動プログラムをたてるようにしましょう。
気候も良くなり運動を始めるには最適な季節です。運動は気分をリフレッシュさせる効果もありますから、少しでも元気に過ごすために、自分にあった運動を始めてみませんか。
※「2017年4月号そらまめ通信」より