保存期の食事について
腎臓病についての基本的な疑問と過去に寄せられた質問、合計100 以上について、 ドクターをはじめ専門家が回答しています。
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(実際に寄せられた質問は、個人が特定されないように加工して掲載しています。)
Q1
なぜ、たんぱく質のコントロールが必要なのですか。
- 回答
- 尿中に排泄される老廃物の大半は、体の成分であるたんぱく質の代謝物です。余分なたんぱく質は分解されて老廃物を増やします。腎不全では老廃物を排泄する機能が低下していますので、たんぱく質の摂りすぎは腎臓に余計な負担をかけると同時に、体内に老廃物を蓄積することになります。
しかし、たんぱく質を控えすぎるとエネルギー不足にも陥り、自分の体の筋肉や脂肪を分解してエネルギーにするので、体重や筋肉量が減少して、体調不良や腎機能低下の原因となります。腎機能を低下させず、かつ体調を維持するためには、たんぱく質の制限とともに、十分なエネルギーを摂取することも重要です。
たんぱく質は、野菜、パン、ご飯、牛乳、肉、魚、卵などさまざまな食品に含まれています。たんぱく質摂取量をコントロールする際には、体に欠かせない必須アミノ酸を多く含む良質なたんぱく質食品(牛乳、肉、魚、卵など)を重点的に摂るようにすることが大切です。適宜、管理栄養士の指導を受けましょう。
Q2
なぜ、塩分のコントロールが必要なのですか。
- 回答
- 体液量(体内の水分量)が多いと血液量が多くなり、それらをろ過する腎臓に負担をかけます。また、血圧も上昇してさらに腎障害が進みやすくなります。そのため、体液量のコントロールはとても重要なのです。塩分を多く摂取すると、血液の浸透圧があがります。浸透圧をさげるため、体は水分を体の中に貯めようとします。さらに、のどが渇いて水分が欲しくなります。そうすると塩分と一緒に水分が体の中に貯まってしまい、体液量が増えます。腎臓が健康な人であれば、尿をだすことで、体内の水分量や塩分量のコントロールが可能ですが、腎臓に障害がある場合には、塩分の摂りすぎは体液量の増加につながり、むくみや高血圧が生じてきます。そのため、腎臓病の治療では一般的に、食事による塩分の摂取量を制限する必要があります。1週間薄味を続けることで食塩に対する感受性が改善します。また、3~4週間継続できると薄味に慣れますが、油断すると簡単に戻ってしまいますので注意が必要です。香辛料や酸味・辛味などで味の豊かさを工夫し、塩味をカバーして美味しい料理を作ることが大切です。
Q3
なぜエネルギーコントロールが必要なのですか。
- 回答
- 人間が生きていく上で、食事によるエネルギー摂取は必要不可欠なものです。食欲が落ちて、必要なエネルギーを摂取できなくなると、体に蓄えた脂肪や筋肉組織がエネルギーとして燃焼され、結果として体重が減ってしまいます。毎日必要十分なエネルギーを摂取することがとても重要です。
食事療法でたんぱく質摂取量の制限がかかると、どうしてもエネルギー摂取量が不足がちになりますので、主治医や管理栄養士さんと相談しながら、糖分や脂質でカバーするようにしましょう。
Q5
なぜ、リンのコントロールが必要なのですか。
- 回答
- リンは体内のカルシウムと結合して、骨や歯を丈夫にする物質です。腎臓の機能が低下すると、不要なリンを尿中に排泄することが難しくなり、血液中にリンがたまりやすくなります。すると人体は、バランスを保つために骨からカルシウムを取り出すため、骨がもろく弱くなってしまいます。またリンとカルシウムが体のいろいろなところ(血管、腱、肺など)に沈着して、動脈硬化や異所性石灰化(必要のないところに石灰化がおきること)を起こすこともあります。こうした問題をできるだけ防ぐためには、リンの摂取量を減らして血液中のリンの濃度を適正な値に維持することが必要なのです。
「どうやってリンのコントロールをすればいいのか」につきましては、「腎臓教室vol.110」にて専門の先生が詳しく解説しておりますので、併せてご覧ください。
「腎臓教室vol.110」
Q6
なぜ水分のコントロールが必要なのですか。
- 回答
- 腎臓の機能低下の段階によって、尿量の変動がみられます。腎不全になると、尿中の尿毒素を体の外に出そうとして尿量が多くなります。腎不全がさらに進行すると、今度は逆に尿量が減ってきます。また摂取した塩分の排泄も十分にできなくなります。このため飲食により摂取した水分や塩分は、排泄が不十分なため体にたまってしまうことになります。過剰に体に蓄積した塩分は、さらに水分の排泄を減らしてしまいます。体にたまった水分はむくみの原因となり、肺や心臓にたまると呼吸が苦しくなってしまったりします。このため、摂取する水分や塩分を制限する必要があるのです。
ただし、逆に極端に水分を制限してしまうと脱水の状態となり、腎臓の血流量が低下してしまい、かえって腎不全の増悪因子にもなります。基本的には、食塩を十分に制限していればある程度の水分摂取は問題ないと考えられています。食塩の摂取制限は腎不全の進行を防止するために必須ですが、水分をどの程度とってもいいかについては、心臓の機能や血液の希釈の程度(食塩を制限しすぎて、水分を普通にとっていると、血液が希釈されます)、むくみの程度によって異なりますので、主治医にご相談ください。
Q8
具体的栄養指導がなく戸惑っています
- 相談者
- 保存期患者の家族、40代、女性
- 相談内容
- 母(78歳)は主治医からもうすこしで透析導入といわれています。しかし、とくに何のアドバイスもありません。栄養士に食事療法のことを相談しても、はかりではかる必要はないといわれ、読んだ本との違いに戸惑っています。
- 回答
-
腎臓の働きや症状に応じて、たんぱく質、エネルギー、食塩、水分、カリウム等の摂取量がきまります。それらの摂取量を算出するためには標準体重が必要になります。1日のエネルギー量は肥満の程度や血糖のコントロールの状態などでも異なってきますし、たんぱく質の摂取量は腎機能によっても異なります。
やはり、細やかな食事指導を受けることが必要になりますので、もう一度栄養相談室にいき、1日の栄養量、食品構成、塩分量、特殊食品の使用方法などを聞いてみてはいかがでしょうか。また、腎臓教室などを他院の患者さんに開放している病院もありますので、参加してみるとよいと思います。
*食事療法の基本
たんぱく質は腎機能に合わせて制限します。必要なたんぱく質量の50〜60%は、良質なたんぱく質(卵や肉類、魚類など)からとるようにします。また、たんぱく質を効率的に利用するために、十分なエネルギーをとることも必要です。マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、植物油などの油脂類をうまく使用したり、春雨、マロニーといったでんぷん食品を利用しましょう。
食塩の制限は、1日6g以下とされていますが、浮腫や血圧によって異なってきます。ただし、必要以上に厳しく制限すると脱水症状になるので注意が必要です。
水分は病状に合わせて制限します。汁物、スープ類は避け、鍋物、お粥、雑炊は控えます。果物、豆腐、アルコールなど水分の多い食品も控えましょう。
血清カリウム値が高い場合は、コーヒーを1日1杯程度とし、そば茶、どくだみ茶は避けます。豆類や生の果物(バナナ、メロン、アボガドなど)も控えます。野菜を食べるときは、30分〜1時間流水にさらすか、ゆでこぼしてから使用しましょう(なお、ゆで汁は捨てるように)。
Q9
高齢でもタンパク制限をした方が良いのでしょうか?
Q10
エネルギー補助のために「芋けんぴ」を毎日食べても大丈夫ですか?
Q11
減塩のために「コチジャン」はどうでしょうか?
Q12
腎臓に良い食品やサプリはありますか?
Q13
キノコ類のたんぱく質は体の中に入ると吸収されないというのは本当ですか?
Q14
87歳の父。クレアチニンが少し高いですが、食事も好きなものをやめさせるべきでしょうか?
Q15
腎不全と言われ、果物を食べてはいけないと言われました。
Q16
甘いものが大好きですが、大丈夫でしょうか?
Q17
自己流の食事制限を続けています。やめた方が良いでしょうか?