腎臓教室 Vol.116(2021年4月号)

CKD患者さんにおける
新型コロナウイルス感染症の家庭内感染対策

コロナ禍はまだまだ続いています。皆さんも不安な日々をお過ごしでしょう。
日本透析医学会によると2021年3月4日現在の日本での透析患者さんの新型コロナ感染数は1,260人となり、そのうち死亡者が164人(13%)と一般人(1.9%)に比べ、非常に高くなっています。特に、糖尿病や呼吸器疾患などの合併症がある場合で高く、感染しないように注意しなければなりません。透析前のCKD患者さんでも正常の人に比べて重症化率が高いと報告されています。
一般的な家庭外、家庭内の注意に加え、CKD患者さんの注意点を述べます。

監修:飯野 靖彦先生
日本医科大学 名誉教授
あだち江北メディカルクリニック 名誉院長
医療法人社団やよい会 理事長

前提は家庭外の感染対策

 ウイルスの感染経路が不明という患者さんも増加していますが、一方でどうしても通勤・通学せざるを得ない人が家に帰り高齢者や基礎疾患のある方などに感染させてしまう「家庭内感染」も増えています。家庭内感染が増える理由は、このウイルスが症状の出る前の期間に他の人へ感染させる特徴を持っているからと言われています。この期間は無症状ですから、家庭内の何気ない会話でも飛沫感染したり、ドアノブなどを介した接触感染も起こり得ます

玄関は第一の防御壁

 外出をした人がウイルスを家庭内に持ち込む入口は「玄関」です。玄関にアルコール除菌液のスプレーなどを置いておき、帰宅したら家庭内のスイッチなどを触る前にまず手指の除菌をおこないましょう。すぐに家庭着に着替えることも重要です。

感染が疑われる人がいない場合
①すぐに手を洗い+うがいをおこなう 手洗い
手指は石鹸や手指用洗剤を使って20秒間は必要です。
②スマホの画面を拭く スマホ
帰宅後すぐに手指を洗っても、スマホの画面からウイルスをつけては何にもなりません。除菌シートなどでボタンを含めしっかりと拭き取ります。
③咳やくしゃみは咳エチケットを家庭内でも守る くしゃみ
咳やくしゃみで口を手で覆うのは×です。ティッシュや袖口などで覆いましょう。
④その他 トイレ
照明のスイッチ、ドアノブ、水道の蛇口など、共用して触れる箇所の除菌・消毒をおこなえば、その他は過度に神経質にならなくても大丈夫です。トイレは便座のふたを閉めてから流すとよいでしょう。また、部屋の定期的な換気も必要です。
感染が疑われる人がいる場合
8つのポイントを日本環境学会がまとめ、厚生労働省が発表しています。
①感染者と他の同居者の部屋を可能な限り分ける 同居
感染者のいる部屋は、できるだけ窓のある部屋で換気のよい部屋が理想です。
②感染者の世話はできるだけ限られた人がおこなう(一人が理想)お世話
感染者の世話をする人は、持病のある人、免疫の低下した人、乳幼児、妊婦は避けましょう。
③できるだけ全員がマスクを着用するマスク
飛沫感染を防ぐため感染者以外の同居する人も全員マスクを着用しましょう。
④家族もこまめにうがい・手洗いをする手洗い
「一仕事終えたら手洗い、一仕事の前にも手洗い」が習慣化されるとよいでしょう。
⑤日中はできるだけ換気をする換気
感染者のいる部屋はもちろん、同居する人の部屋も日中換気は必要です。
⑥ドアノブなど共用する部分を消毒する消毒
特にトイレや洗面所など感染者と共用する部分、感染者のベッド柵などは念入りに消毒をおこないましょう。
⑦汚れたリネン、衣服を洗濯する洗濯
タオルや食器などは別々にします。こまめな洗濯で除菌も可能です。感染すると下痢が見られることがあるので、感染者の体液のついた衣服やタオルなどは、手袋、マスクを着用して家庭用洗剤を使用し洗濯機で洗いましょう。
⑧ゴミは密封して捨てるごみ
感染者が使ったティッシュに触れると感染する可能性もあります。ビニール袋を用意しておき、室外に出すときは密封して捨て、その後はすぐに手を洗いましょう。
(参考:厚生労働省「新型コロナウイルスの感染が疑われる人がいる場合の家庭内での注意事項」)

CKD患者さんの家庭で感染が疑われる人がいる場合

 今まで十分に注意をしながら過ごしていても、長引いてくることで疲れや緩みが出ることがあります。一方で、診療控えや過度な外出自粛も続き、身体的・精神的・社会的活動量が低下する傾向も見られます。家族に症状が出たら勝手に判断せず、医療機関に相談しましょう。
 CKDを含めた基礎疾患(慢性閉塞性肺疾患、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、脳心血管疾患、肥満症、癌、免疫不全など)をもつ患者さんは、新型コロナに感染すると重症化する危険性が高くなります。感染が疑われる症状は、発熱、咳、味覚嗅覚異常、呼吸困難、鼻水など一般的な風邪症状です。CKD患者さんやその家族にこのような症状があれば、医療機関に相談することが必要です。自分で大丈夫だと判断して、薬だけ飲んではいけません。
 透析患者さんは、透析クリニックに電話して家族に症状があることを伝え、指示に従います。
 保存期CKD患者さんは、上述した8つの一般的注意に加え、なるべく会話をさけ、通常服用している薬剤は服用し、家族の症状が軽快するまで注意しましょう。一応、10日間悪化なく、症状がなくなれば問題ないでしょう。
 また、ワクチンの接種については、CKD患者さんも特別な理由がなければ、積極的に受けたほうがよいでしょう。適切な感染予防、重症化予防が大切です。

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