腎臓教室 Vol.82(2015年8月号)
慢性腎臓病(CKD)のチーム医療 看護師・管理栄養士の役割
慢性腎臓病(CKD)では、医師だけでなく多くの医療スタッフが連携して患者さんの治療にあたっています。前回はかかりつけ医の役割を紹介しましたが、今回は看護師と管理栄養士の役割について取りあげ、お二人の先生にコメントをいただきました。
監修
杉田 和代 先生 東京有明医療大学 看護学部 講師/慢性疾患看護専門看護師/日本腎不全看護学会理事
石川 祐一 先生 日立製作所 日立総合病院 栄養科 科長 日本栄養士会理事
看護師の役割
長くCKDの治療を続けていると、検査値やライフスタイルの変化によって、体調管理に疑問を感じたり戸惑ったりすることがあります。しかし、多くの患者さんの疑問に医師が充分に時間をとって説明することが難しいのが現状です。そんなときにサポートしてくれるのが看護師です。看護師には多くの役割がありますが、患者さんの話を聞きアドバイスをすることも重要な役割のひとつです。また患者さんと各医療スタッフの連携をコーディネイトする潤滑油としての役割も担っています。長年、腎臓病看護相談を担当してきた東京有明医療大学看護学部の杉田和代先生は、医師が十分に説明できない患者さんだけでなく、「高齢者や1人住まい、介護施設などに入居している人などから質問を受ける」ことが多いといいます。さらに「食事や不規則な生活を見直して欲しい人や、透析や移植など腎代替療法についてよく分からないという人との面談も大切」です。最近の相談内容について聞いてみたところ、さまざまな質問がありました(表1)。
それぞれの相談について杉田先生は、「事前に医師と依頼内容を確認し、その後に患者さんと面談する」と手順を説明してくださいました。「話をよく聞き、患者さんが頑張っていることを、患者さん自身が意識できるように言葉にして伝えること、日常生活でちょっとした工夫を引き出すようにして、次の目標を設定すること」なども、面談する際のポイントです。面談後には、問診票に記載したり、カンファレンスで報告するなど、ほかの医療スタッフと情報を共有することも大切です。さらに訪問看護ステーションや介護施設とも連絡をとりあい、地域社会との連携を深めるなど、的確な治療をおこなうための看護師の役割は多岐にわたります。
管理栄養士の役割
CKDの治療における管理栄養士の役割は食事療法の支援ですが、食事療法はそれぞれの患者さんの状況によって大きく違ってきます。保存期ならステージはいくつなのか、透析をしている場合はどんな透析をしているのか、また原疾患や性別、体格や運動量によっても異なってきますし、病気の進行程度やライフスタイルによっても調整が必要です(表2)。このように細かい基準が定められているため、患者さんやその家族だけで継続するのはとても大変です。特にCKDは自覚症状が少ないため、ちょっとの挫折でやる気がなくなり、食事療法そのものを止めてしまうケースも見られ、これが透析導入を早めたり、心血管疾患やさまざまな合併症を誘発させる原因にもなっています。
日立総合病院栄養科科長の石川祐一先生は、CKDの食事療法の問題点(表3)を整理し、管理栄養士の役割は「患者個々に合わせた適切な栄養指導・栄養管理をおこなうこと」といいます。さらに「CKDが重症化するのを予防するためには、医師、看護師、管理栄養士、薬剤師などが連携して生活指導や食事指導、服薬指導をおこなう体制づくりが急がれる」と指摘されています。
以上のように、CKDを進行させないために医師をはじめ看護師、管理栄養士、薬剤師などの医療スタッフが連携して患者さんを支援する体制作りが進んでいます。腎臓病専門の看護師や管理栄養士の育成も各地でおこなわれています。まだすべての病院や地域でこのような試みが実践されているわけではありませんので、自分の病院にはこんなシステムはないという場合は、疑問や悩みがあれば、看護師や管理栄養士に積極的に聞いてみることで、解決の糸口がつかめることでしょう。